施しを拒んで石になった芋
どんな伝承か
三浦郡葉山町には石イモ井戸と呼ばれる井戸が今もあるという。ある日、農家のおかみさんがこの井戸で畑から取ってきた芋を洗っていると、破れ笠に破れ衣の乞食坊主が通りかかり、空腹で倒れそうだから芋を一つ恵んでほしいと頼んだ。おかみさんは偽の坊主だろうと冷たくはねつけて帰ったが、夕食に煮た芋はいつまでもやわらかくならず、煮るほど石のように固くなった。別の芋を同じ井戸で洗って煮ても同じで、それ以来この井戸で洗った芋はみな石芋になったという。坊主は弘法大師で、欲張りをこらしめる少し意地の悪い大師伝説として紹介されている。
原典より
そればかりか煮れば煮るほど石のように固くなり、かじることさえできない始末。—— 神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年))
『神奈川の史実と伝説』は、新聞記者から県政の仕事に転じた小森良章が昭和五十年に著した郷土史の読み物である。倭建命の東征から鎌倉幕府の滅亡までを範囲に、神奈川県内に残る伝説を十一の篇にまとめ、走水の弟橘姫や足柄山の金太郎などを取り上げる。各篇は伝承地を副題に掲げ、伝説とその背景にある史実を結びつけて語り、古事記や吾妻鏡などの記録を引きながら著者の推測も交えている。