芦の湖の九頭竜明神
どんな伝承か
奈良時代、芦の湖には九つの頭を持つ毒竜が住み、毎夜岸に現れては人を食い、機嫌が悪いと洪水や疫病まで起こした。村人は村が絶えるのを恐れ、毎年若い娘を人身御供として差し出すことにしたため、娘のいる家は順番が回るのに怯えていた。これを知った箱根滞在中の奈良の高僧万巻上人は、湖の中に石段を築いて日夜祈り続けた。ある日湖面が渦を巻き、毒竜が宝珠と錫杖と水瓶を捧げて現れ悪行をわびた。上人は戒めに竜の首を鉄の鎖で湖底の杉の大木につなぎ、竜が山と人を守ると誓ったので、湖岸の森に社を建てて九頭竜明神として祀った。以後村人は人身御供の代わりに赤飯を炊いて湖底に沈めたという。
原典より
禁忌の伝説 二三一トウモロコシを作らぬ谷戸(川崎市野川) 二三一地名の伝説 二三九—— 神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。