狐が晦日に田を植えた十二月田
どんな伝承か
川口の十二月田という地名の由来には狐がかかわる。『新編武蔵風土記稿』は、十二月の晦日に狐がやってきて杉の葉で田植えの真似ごとをした、それがこの村の名の起こりだ、という奇怪な説を載せている。地元には杉葉ではなく穂のついたままの稲を植えたのだという伝えもあり、十二月田の田中道造が持っていた文書にそう書かれていたともいうが、その文書は今は残らない。狐を田の神の使いとみる信仰の痕跡と解されている。
原典より
十二月田地名について、『新記』は「十二月晦日狐来りて杉葉を以て田を植るさまをなせしより此村名起れりと云ふ奇怪の説なり」と記してある。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。