店の名を騙って傘を持ち去った男
どんな伝承か
一軒屋は路端に近いので、時々人が寄ってくる。忘れ物をした人もあれば、自転車が毀れて困った者も来て、鉄槌はないか、釘抜を貸せと言う。空気ポンプはないかと言う者が度々あるので、自分は乗り方も知らないが一挺買って置いてあるという。雷が急に鳴り出すと必ず誰かが駆け込んでくるし、雨がやみそうにないと傘を貸すこともある。一昨年ただ一度、飯野川のよく行く店の若い衆だと名乗って傘を持ち去った者があった。町へ出たついでに寄ってみると、そんな人はいないといい、まったく店の名を騙ったのであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。