大雪の日に傘を忘れた亡妻
どんな伝承か
文化年間のこと。仙台藩士貝塚靖右衛門は役者にしてもよい男で、長く江戸詰であった。妻女は茂庭家の腰元をしていた美女で、取り持たれて夫婦となった。靖右衛門が国許詰となり仙台城下へ移って三年目の秋の初め、妻女は胸を病んで亡くなった。靖右衛門はやつれ果て、甥に家を譲って寺の食客となり、僧と詩文を綴って日を送った。久しぶりの大雪の日、寺に傘をさして妻女が訪ねてきた。むろん亡霊である。その姿は美しかったと僧は記している。離れでしばらく籠ったのち亡霊は帰り、雪が上がっていたので傘を忘れていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃)
東北怪談の旅(山田野理夫)/飢饉の非業の死と怨念/巫女(イタコ)の口寄せ/座敷童子・河童の怪/東北各地の幽霊伝承