蓑笠で訪れる田の神カセギドリ
どんな伝承か
カセギドリが徳岡の村へ遣って来るのは正月十二日の午前からであった。ケンダイと称する蓑笠を着た姿から鶏のことだと考える者が多く、帰るときにケケロと鳴いて見せたり、他村の群と道で逢えばまず雌鳥か雄鳥かと尋ね、雄鳥と言えば蹴合いをしようと掴み合った。主人が憎まれている家にだけは若い者が入り込んで暴れ、厩の前の木櫃を伏せて杖で底を突き立て、スハクへと言った。老人たちは、その装いが案山子とよく似ているのを見て、これは田の神の姿であろうと想像していたらしい。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。