狐を二匹捕って罰金五十円
どんな伝承か
飯野川に近い沢の一軒屋に、七十を過ぎた桑の番人が住んでいた。昔はこの辺りに狐が出て豆を食い荒らし、犬に噛み殺させていたが、犬が年を取って役に立たなくなったので、横浜の商店から三寸ほどの、真中に丸い金があって片方の足を載せるとかたりと落ちる虎挟みのような機械を買って使っていた。米国製だといい、十年ほど使ったという。その年の二月にその機械で狐を二匹捕り、すぐ町へ持って行って売ったところ、飯野川の警察から呼び出された。罰金五十円を出すか、金が出せぬなら五十日来て働けと言われ、七十にもなって牢に入れたくないと家の者が五十円を出してくれた。顔を知っている巡査が書付を書いてくれ、機械と五十円で済んだと老人は語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。