尾張犬山・美濃太田のヤロカ水
どんな伝承か
大雨が降り続いていた頃の真夜中、対岸のどこかの淵のあたりから「遣らうか遣らうか」という声がしきりに聞こえた。土地の者たちは気味悪がって皆逃げてしまったが、たった一人だけ「いこさばいこせ」と答えたところ、たちまち川の流れが増して、あたり一帯の低地を海のようにしてしまったという。尾張の犬山でも美濃の太田でも、洪水のあった年代は違ってもこの「ヤロカ水」という呼び名の由来は同じだと伝えられ、明治初年に入鹿池の堤が切れた際にも同様の怪異があったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。