木曾与川の山姫と洪水
どんな伝承か
木曽の与川の川上では、古い頃に百人もの杣が入って小屋を掛けて泊まっていると、この杉林だけは残しておいてくれという山姫様の夢の告げがあった。それにもかかわらず伐採に取りかかると、やがて大雨が降って山が荒れ出した。そして闇の夜中に水上の方から「行くぞ行くぞ」としきりに声を掛けてきた。小屋の者一同が負けぬ気で声を合わせ「来いよー」と遣り返すと、たちまち山は崩れ、残らず押し流されて、この顛末を語り得る者がただ一人生き残ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。