矢の根の出る八幡沢の館址
どんな伝承か
土淵村には安倍氏という家があり、貞任の末だという。昔は栄えた家で、今も屋敷の周囲には堀があって水を通じ、刀剣馬具を多く伝える。安倍の子孫はこのほかにも多く、盛岡の安倍館の付近にもある。土淵村の安倍家の四五町北、小烏瀬川の河隈には館の址があり、八幡沢の館という。八幡太郎の陣屋がこれである。ここから遠野の町への路には八幡山という山があり、その峰にもまた一つの館址があって貞任の陣屋だという。二つの館の間は二十余町を隔て、矢戦をしたという言い伝えがあり、矢の根を多く掘り出したことがある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。