馬の首に乗り昇天した娘とオシラサマ
どんな伝承か
土淵村山口の大同の当主を大洞万之丞といい、その養母をおひでという。八十を超えて今も達者で、魔法に長じ、まじないで蛇を殺し、木に止まる鳥を落として見せた。この老女の語ったところでは、昔ある処に貧しい百姓があり、妻はなく美しい娘と一匹の馬があった。娘はこの馬を愛して夜になると厩に行って寝、ついに馬と夫婦になった。父はこれを知り、娘に知らせず馬を連れ出して桑の木に吊し殺した。娘が馬の首に縋って泣いていると、父は憎んで斧で馬の首を切り落とし、娘はその首に乗ったまま天に昇り去った。オシラサマという神はこの時より成り、馬を吊した桑の枝でその神像を三体作ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。