四五度も攫われた下男の諸国飛行
どんな伝承か
黒甜瑣語に、世の物語に天狗のカクシということがあり、秋田藩にもそうした事があると記されている。元禄の頃、仙北稲沢村の盲人が伝えた不思議物語にも多く見え、下賤の者ほど拐かされる者が多いという。近くは石井某の下男が四、五度も誘われた。初めは出奔かと思われたが、諸道具も衣服も残っていた。一月ほどして立ち帰り、津軽を残らず一見したと詳しく語った。その後一年ほどして部屋が騒がしくなり、助けてくれと叫ぶので人々が出て見ると、早くも姿は無い。このときも半月ほどして越後から帰り、山の上からその国の城下の火災を見たと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。