仙童寅吉(高山嘉津間)の霊界談
どんな伝承か
江戸で評判になった近世の記録に仙童寅吉の物語がある。神界で高山嘉津間と呼ばれた少年の話で、平田篤胤の手を経て『嘉津間答問』として世に出た。寅吉は七歳のときから上野の山下で飴を売る老人に連れられ、ときどき常陸のある山へ往来していたと語るが、実際にいなくなったのは十四の年の五月からで、十ヵ月ほどして戻り、雄弁に霊界の事情を語った。諸国を飛び回ったというが、本拠は常陸の岩間山の頂上にあった。まぎれもなく天狗山人の社会で、方式にも教理にも修験道の匂いが強い。少年の話には前後の矛盾も多かったが、当時の学者は善意に解釈して自派の神道の解明に用いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。