旧家を巡り源平を語った白石翁
どんな伝承か
青麻権現の奇跡と同じ頃、同じ仙台領の伊達から白石の辺にかけて、村々の旧家に寄寓して歩いた白石翁という異人があった。身の丈六尺、眼光は流電のごとく、なかなかの学者で神儒二道の要義に通じていた。この翁の特徴は、紙さえ見れば字を書くことと、源平の合戦を談ずることであった。年齢は言わず、誰を見てもセガレと呼び、角田の長泉寺の天鑑和尚が百七つまで長命したのにやはりセガレとして交わっていた。あるとき将棋をさしていて、二百年前の人である曲淵正左衛門のことを言い出した。身元が知れぬので、甲州の山県昌景か、信玄の次男の子か、あるいは清悦であろうとも言われた。元禄六年二月十八日に白石在の某家で病没したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。