荒乳山の白山明神出産伝説
どんな伝承か
近江から越前へ越える北国街道の荒乳山にも、山中の誕生をめぐる古い伝えの断片があった。義経記巻七には、義経の一行がこの峠を越えあぐねて道端で休んだとき、弁慶がアラチという山名の由来を説いたことになっている。加賀白山の山の神である女体の宮が志賀の辛崎明神と契って懐妊し、月が近づいたので自分の国へ帰って産もうと明神に助けられて峰を越える折、にわかに催して山中で神の子を産み、荒血をこぼしたので荒血山と呼ぶという。足利時代中期に物知りの間で記憶されていた口碑と見られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。