嶺に横たわる山鬼の路
どんな伝承か
菅江真澄の遊覧記三十二巻の下、北秋田郡の黒滝の山中で道に迷った条に次のようにある。やや山頂と思われる所に、横たわる路のかたちばかりが見えたので、ここに路がある、ああ嬉しいと言うと、案内の者が笑い、どこの嶺にも山鬼の路といって嶺の通路はあるものだ、この道を行けばまたどこへとも無く踏み迷うだろうと言って、向かいの峯へ登ったという。伊能嘉矩によれば、陸中遠野地方でも山の頂の草原に路らしい痕跡のある所は山男の往来に当たるといい、露宿の人はこれを避けるのが普通であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。