二階へ上がった少女の遊魂
どんな伝承か
元禄十三年のころ、京の男が夜更けに三条大橋を渡ると、西の川岸で十二、三歳の女の子が一人で水遊びをしていた。近寄ってみると、懇意にしている三条釜座の足袋屋の娘である。声をかけると娘はにっこり笑い、三条通りを西へ駆け出した。男はどうしても追いつけず、足袋屋の前まで来ると、娘の体は地を離れて宙に浮き、開いていた二階の窓から中へ入った。翌日訪ねると、娘は、夢で知らない川で遊んでいたら声をかけられ、親に告げ口されては大変と懸命に走って帰り、汗をかいて目が覚めたと話した。男は見たままを言わずにおいたという。
原典より
と、娘の姿は急に地をはなれ、スウーッと二階に上っていく。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。