⑤ かに獲りのこと
どんな伝承か
宮久保の者は、行徳の海岸、原木の先まで石蟹を捕りに出かけた。本来は食用の蟹や魚を捕るのが目的だが、一日をまるごと使うのはもったいないというので、肥料に使う分も一緒に捕ってきた。担いで行った桶に石蟹を入れ、棒で潰して人糞の肥料溜めに混ぜたのである。漁の好きな者がよく行った。時期は潮干狩りの頃の五月で、六月になると田植えで忙しくなるからだという。
原典より
行徳の海岸まで(原木の先)石がにをとりに行って、肥料だめに入れて本当は食用のかにや魚をとりにいくんだけども一日中まるっきり使うのはもったいないから肥料でもとりながらいようってとこですね。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。