膳を貸したという隠れ里の横穴
どんな伝承か
佐倉市の下勝田から直弥へ抜ける道に面した丘の中腹に、隠れ里と呼ばれた横穴があったという。夜が更けると、そこから米を搗く音が聞こえてきた。里人が膳や椀に不足して困ったときには、この穴へ出向いて御膳を百人前貸してほしいと願う。すると頼んだだけの品が、必ず穴の前にそろえてあったと伝えられる。里人も使い終えれば、きれいにして元の場所へ戻すのが習わしだったが、返した品はいつのまにか消えていた。のちに土木工事でこの横穴が壊された折、中から二体の人骨と刀剣、わずかな生活道具が出たが、そのまま顧みられなかった。
原典より
隠れ里とよばれたひとつの横穴が、佐倉市下勝田から直弥に通ずる道に面した丘の中腹にあったという。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。