榎の洞に住んだ馬ぐそ仙人
どんな伝承か
榎町にはかつて榎の大木があり、その根元は人ひとりが出入りできるほどの洞になっていた。ここに馬ぐそ仙人と呼ばれる奇人が住みついていた。ぼろをまとい、杖一本と籠を二つ提げて早朝から往来に出ては牛馬の糞を拾い集め、籠がいっぱいになると四谷あたりの小役人や民家へ売りに行く。得た銭で米を買い、路傍の枯れ木を集めては腰に下げた古鍋で煮炊きした。天気のよい日には洞の前に立って子どもを集め、古歌を書いた紙片を与えるのを楽しみにしていたが、大人とはひと言も口をきかなかったという。
原典より
時代 江戸時代貞享(一六八四一八七)のころ榎町には、むかし榎の大木があった。—— 新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年))
『新宿と伝説』は、新宿区教育委員会が昭和四十四年に編んだ区内の伝説集である。カッパが出る坂、四谷怪談のお岩、矢来町の化け石、女幽霊が掘った清水など、牛込・四谷・戸塚大久保・新宿・淀橋柏木落合の各地に伝わる六十二の伝説を、江戸の地誌や随筆などから採って収める。第一章で伝説の分布と型を概説し、第二章では地域別に、各話へ場所・時代・出典・解説・参考書を添える。