役行者ゆかりの霊泉独鈷水
どんな伝承か
洲崎の養老寺の庭に、独鈷水と呼ばれる霊泉が湧いている。役行者が修行した場所と伝えられ、冬も夏も水が涸れることがないという。石段の脇には池があり、南無妙法蓮華経の題目を刻んだ石が置かれて、今も絶えないと語られる。養老寺はかつて洲崎明神の別当吉祥院の社僧を兼ねていたともいう。また、里見の姫が幽閉されたという役行者の窟は、まさにこの場所であったと伝わる。『房総志料続篇』は、日本書紀に役小角が伊豆島へ流されたとある記事を引き、大島から十八里のこの地こそ役小角が潜んだ地であろうと考証している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。