白実洞の芽の出ない栃
どんな伝承か
飛騨の旧益田郡小坂町、坂下の見上洞にある白実洞という場所での話である。昔、一人の旅人が日が暮れても宿を見つけられず、宿はこの洞の上にあると村人に教えられた。ところが道に迷ってしまい、ついに栃の木の下で自ら命を絶った。その後この栃は実をつけるものの、実には芽がなく発芽しない。村人はこれを芽無栃と呼んだ。のちに栃は枯れ、その跡に生えた栗の葉はことごとく二つに裂けていたという。
原典より
坂下見上洞の白實洞といふ處にある。—— 日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。