使いの途中で山犬と睨み合った少年
どんな伝承か
父が十か十一ほどの年に、山の中へ使いに行ったときのことである。途中で森の中を通らなければならず、通りかかると大きな山犬が、わあっと口を開けて舌を出し、そこにいた。父は後ろを見せれば飛びつかれると思い、子供心にも山際をこするようにして、山犬と睨み合ったまま進んだ。その前をどうやって通ったのか分からないほどだったという。そのまま使い先へ駆け込んで、気を失ってしまったと聞かされていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。