夜の山道に響いた猫の話し声
どんな伝承か
隠岐の島前で語られた体験談。語り手が二十歳前のころ、隠岐では麦を作り、刈って山に囲っておいたものを牛で運んでいた。畑が遠いので暗いうちに牛二頭を連れて出かけ、月が山に入ると道端の薪を松明にして進んだ。まだ暗いので道端で火をたいて休んでいると、ごちゃごちゃと話し声がする。近くには炭焼き場があり、顔見知りの炭焼きの親爺たちだろうと思った。夜明けを待って荷をつけ、別府から戻る途中でその親爺夫婦に会うと、昨夜は別府に泊まって今帰るところだと言う。では夜中の声は何だったのか、猫が化けていたのかと語り手はいぶかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。