引越し先へ帰った飼い猫
どんな伝承か
近所に越してきた一家から仔猫を一匹もらい受け、ここの猫は人間よりも大事にされていると言われるほど可愛がって七、八年が過ぎた。娘が修学旅行に出る朝、猫の元気がないというので、旅行から戻ってから病院へ連れて行くことにし、娘を送り出して帰ってみると猫の姿がない。近所まで探しても見つからず、猫は死ぬときに姿を見せないというから、どこか人の目につかぬ所で死んだのだろうと思っていた。何年か後、市場で偶然その一家の奥さんに出会い、猫がいなくなったと詫びると、猫は引越し先の奥さんの母のもとへ帰ってきて、二、三日して死んだと聞かされたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。