死んだ姉が戸を叩いた暇乞いの夢
どんな伝承か
南設楽郡横山のある女、特に名を秘す者の話である。もう二十幾年前のことで、その女が二十のときである。一人の姉が一里ほど隔たった所に患っており、病勢がだんだん重くなったと聞いて、近いうちに一度見舞に行こうと考えていた。ちょうど姉が息を引取った晩のこと、部屋に一人で眠っていると、誰かが来て門の戸をとんとんと叩く。誰かと声をかけると、私だ私だと言うのは、患っているはずの姉である。驚いて起き出し、大戸を開けて招じ入れ、座敷へ引き上げて向かい合ったところ、またも門の戸を叩く音がする。思わず叫んだ自分の声で気がつくと今のは夢で、なお戸は激しく叩かれる。開けると村の衆が姉の死の報せに来ていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。