人波に逆らって去った姑の夢
どんな伝承か
昭和五十年のことである。語り手の姑が、混み合う駅のホームのような場所で、人の流れに逆らってどんどん向こうへ歩いていく夢を見た。こっちよ、迷子になりますよといくら呼びかけても、一度振り返っただけで行ってしまう。四、五日は気にかかっていたが、当人はいたって元気だったので、そのうち忘れていた。ところが一か月ほどのち、姑は脳卒中で急に亡くなった。あとになって夢を思い出し、腑に落ちるような妙な心地がしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。