枯れかけた稲荷の榊と祖母の病
どんな伝承か
七〇年から八〇年ほど前、富岡での話。語り手の祖母の祖母にあたる高瀬とみは、当時六五歳ほどで、年中どこかしら具合が悪かった。思いあまって占いにかかると、占師は、お稲荷さんのところの榊が枯れかけている、それが体の障りなのだと告げた。稲荷は藪の中にあって、とみもふだんは足を運んでいなかった。行ってみると確かに榊は弱っており、とみは参って水をやるなどの世話を続けた。するとやがて榊は芽を吹いた。占師は、芽が出れば案じることはないと言い、その言葉どおりとみの体はしだいに楽になって、難儀するほどではなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。