楠を抱いて守った仙じいさん
どんな伝承か
明治の頃、吾川郡春野町の弘上に、目通り六・二メートル、根本九・二メートル、樹齢四百年という楠の巨木があった。あるとき、この木を伐り倒そうとする不届き者が現れる。神木に手をかけるとは何事かと部落の者たちが集まってきたが、相手はやくざ風の男たちで、凄んで引こうとしない。すると、伐るならまず自分を伐れと言って幹に抱きついた者があった。仙じいさんの死を覚悟したふるまいに部落の人々も勇み立ち、男たちに飛びかかっていった。こうして神木は伐られずに守られたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。