漁師の目印の松を伐った跡の兵舎
どんな伝承か
昭和一九年頃の話。語り手が入隊したとき、三重海軍航空隊の第一兵舎はすでに使われていなかった。一志郡香良洲の漁師たちは、沖へ出るとき陸の松を目印にしていたが、その松は航空隊の建設のために伐られてしまった。夫婦松と呼ばれた一方が切られ、残りも枯れたらしいという。その跡に建てられた第一兵舎では怪我人や首吊りといった事故が絶えず、とうとう誰も使わなくなった。滑走路の一部には墓石が残ってもいた。日本の航空隊には怪談がつきものでした、と語り手は結んでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。