屋敷に三十余年棲んだ白光りの大蛇
どんな伝承か
甲山の中地誠さんの家には、三〇余年のあいだ一匹の大蛇が棲みついていた。脱皮した皮の長さは二メートル二〇センチ、胴回りは湯呑茶碗ほどあったという。初めて見たのは戦後まもなくの頃で、中地さんの亡母が縁の下に飼っていた鶏の卵を取ろうと手を入れた途端に指を咬まれ、悲鳴に駆けつけた中地さんが逃げ去る大蛇を見た。その後も母屋と土蔵の続くあたりで時々見られ、竹で突くと頭でこつこつと突き返した。悪さもしないので家の主にしておこうと放っておいたが、老人会が草むらで見つけて大騒ぎをしてからは、ぴたりと姿を見せなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。