門の閂に触れた冷たい家の主
どんな伝承か
主人の実家の屋敷内に、いつからか蛇がいた。戦後、焼け跡に父が家を建ててからのことである。家から離れた納屋の中でとぐろを巻いていたり、時候のよい日には前庭の梅の木に、古い木に苔が生えているように長々と寝そべっていたりした。ある日、母が買い物から帰って門の戸を開けようと、閂に渡してある木へ手をかけるとひやりと冷たく、気丈な母もどきりとして手を引っ込め、蛇がゆっくり通り過ぎるのを待ってから開けたという。直径七、八センチほどの太い蛇で、家の者はあれは家の主だからかまってはいけないと言った。その蛇も父が死んだ昭和五〇年頃から姿を見せなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)