店屋町の二階から降りる丸髷の女
どんな伝承か
大正八年秋、博多の店屋町の洋服屋に幽霊が出るとうわさが立った。同じ町内に住む速水真珠洞が洋服屋の主人から聞いた話によれば、夜中にはしごがミシミシと気味の悪い音を立てて鳴るという。ある夜、何の音だろうとのぞいたところ、丸まげを結った若い女が二階から降りて来ていた。その洋服屋はなかなか繁盛していたが、間もなく引っ越して行った。あとに呉服屋や陶器屋が移ってきたが、いずれも長く住みつかなかった。この店屋町の幽霊屋敷は当時、全市の話題になったほどだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。