俺は汚れになったとわめいた婿
どんな伝承か
高知県幡多郡のU部落では、イヌガミが憑く現象は四、五十年前にほぼ絶えたが、筋の家との縁組はいまも強く嫌われる。筋の家と縁を結ぶことを「汚れる」と言い、そこには穢れの観念がひそんでいるようだという。イヌガミスジでないある青年が、筋の家の娘のもとへ夜這いに通ううちに娘が身ごもり、婿養子に入らざるをえなくなった。青年は酒をしたたかにあおって、俺は汚れになった、とわめき散らしたという。筋の家は「わりー方」、そうでない家は「ええ方」と呼ばれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。