莚を数える嫁の幽霊
どんな伝承か
亘理町の北新町に、昔ある武士の屋敷があった。姑は嫁を憎んで日ごろから辛く当たっていたが、ある夏、麦を搗かせて十枚の莚に干させ、そのうち一枚をひそかに隠したうえで、莚一枚分の麦を盗んで売ったのだろうと責め立てた。嫁は無念のあまり井戸へ身を投げて死ぬ。その後は毎夜のように亡霊が現れ、一枚、二枚と数えて九枚まで来る声が凄まじく、やがてその辺りを通る人も絶えた。武士の家も病死や乱心する者を出して絶えてしまう。明治の末ごろまで、雨が降っても屋敷跡の莚九枚分だけは濡れないといい、子どもたちが怖がりながら見に行ったという。
原典より
昔ここに、ある武士の屋敷があった。—— 宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。