蟒蛇の腫物を治した侍が授かった秘法
どんな伝承か
仙台藩の支封である留守家の家臣に、花渕善兵衛という侍がいた。ある年、主家の用務で海路江戸へ向かうことになり、順風を待って花渕浜から船出した。藤塚浜の沖を走っているとき、陸の方から異様な獣の咆吼が聞こえてきた。善兵衛は聞き過ごしがたく、同船者が止めるのもきかず船を磯岸に着けさせ、単身、葭原の谷地を押しわけて進んだ。すると湿地に蟒蛇がのたうち苦しんでおり、咽喉のあたりがひどく腫れている。善兵衛は松の枝を鋭く削って腫物を刺し、膿血を絞り出して膏薬を塗ってやった。江戸から戻って数日後、蟒蛇が女の姿で夢に現れ、毒蛇に咬まれぬ護符と治療の秘法を一子相伝として授けたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。