島の犬を喰い殺した田代島の大古猫
どんな伝承か
陸前国石巻から東南へ八里ばかり隔てた田代島という所に、世にも恐ろしい古猫がいた。この古猫は島中の犬を片端から喰い殺してしまうので、田代島には犬が一匹もいなくなったという。雨の降る夜などにその古猫が出てきて啼くことがあるが、その声はまるで雷のようで、風さえ起こすかと思われるほど不気味であった。鱈小屋などへ忍び込んで大きな鱈を一と口に咥えていくほどの大猫であったが、人には決して害をしないので、島民たちはいつしかこの古猫を、神様のおつかい姫のように怖れ敬っていたということである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。