宣戦の午砲とともに賢所へ来た白鳩
どんな伝承か
大正三年八月二十三日の正午、日独開戦の詔書が発せられた。その同じ日、宮城の内でも不思議なことが起きたと伝えられる。正午を告げる午砲が大内山に鳴り渡ると、おびただしい数の白鳩が賢所の御内苑へ飛来したというのである。ある宮内大臣はこれを実に不思議な瑞兆であると語った。出雲大社では日清・日露の戦のたびに神使とされる白鳩が姿を消し、戦が終わると戻ると言い伝えられ、この時も宣戦の詔勅が下るころには数百羽がほとんど見えなくなっていた。鳩は戦地へ赴いて軍を守るのだと噂される中で、宮城への飛来はことさら吉兆と受け取られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。