東武館主が娘の首を仏前に供えた惨事
どんな伝承か
大正六年、水戸市上市田見小路の東武館の館主で、武徳会の教師を務め水戸農会長でもあった剣士小沢一郎は、三月上旬から精神に異常をきたしていた。ある夜、日本刀を提げて弟子二人にも刀を持たせ、自分の持ち家に住む土工大橋松太郎の家へ押しかけ、松太郎とその母に斬りつけて重傷を負わせ、家財を荷車で持ち帰った。警察は北辰一刀流の達人を恐れて取り押さえずに引き上げ、一郎は深夜、自宅で寝ていた長女かねの首を斬り落とし、手足を断ち、胸や尻の肉をえぐって大皿に盛り、洗った首を飯櫃に入れて仏壇に供えた。朝、水戸駅前の派出所で捕らえられたという。
原典より
水戸市上市田見小路東武館主大日本武徳会教師、武徳会茨城支部評議員、水戸農会長小沢一郎(六一)は、去る三月上旬より精神に異常を呈し、時に暴行を演ずるより家人が注意中の所、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。