乳房九つの牝犬が猫を産む
どんな伝承か
横浜市鶴見区潮田町二〇七八の料理店「にわの家」の愛犬で、丹羽、一名「チビ公」というチンとテリヤの混血の牝犬が、数日前に月満ちて二日間の陣痛に悩んだのち産み落としたのは、奇怪にも赤白の牝猫で、続いて産み落としたのが赤白黒の三毛猫であった。同家の女主人も、産婆役として介添えについていた女中も目を疑って見直したが、その犬が産んだ子はまさに猫であった。母犬は驚き騒ぐ人々を尻目に乳を含ませて育てている。この犬は座敷芸を十幾つも覚え、鰹節の飯に鳥肉を好み、押入れで鼠を三匹も捕えるなど猫のような習性を持ち、乳房の数が九つあった。仔猫の父親は近所の斑の牡猫だろうとされた。
原典より
なお、その牝犬の変っていることは、乳房の数が九ッあった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。