奉公袋に入っていた馬の毛の奇瑞
どんな伝承か
日支事変の勃発にあたっても不思議な奇瑞が現れたという。神奈川県津久井郡湘南村の一農夫という人から、「あまり変な話ですが真実のことですから」として新聞に投書があった。近頃いつからか村に「在郷軍人の奉公袋に馬の毛が入っている」という話が出たので、各人が袋を点検したところ、不思議にも短いものは五分、長いものは二寸、色は黒または赤黒い毛が一本ずつ入っていた。村人はこれを戦いの前兆だと言っており、袋の縫目にまで入っているので静かに見てほしい、という内容であった。これはまさに、その翌日の九月十八日に勃発した日支事変の前兆となったわけである。
原典より
近頃何時となく村に『在郷軍人の奉公袋に馬の毛が入ってる』という話が出たので、各人袋を点検したところ、不思議にも短いのは五分、長いのは二寸、色は黒または赤黒いのが、一本ずつ入っておりました、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。