大阪城天守閣に立った黒煙と怪光
どんな伝承か
昭和七年四月五日の午前十時ごろ、完成してまもない大阪城の天守閣で不思議なことが起きた。頂上を飾る鯱の尾のあたりから真っ黒な煙がもうもうと立ちのぼり、二十分近くも続いたのである。火事でもなく、煙の出る理由も見当たらないため、大勢の見物人が声を上げて騒いだ。前の年の十一月七日、落成式の夜に祝い酒で上機嫌の係員たちが天守閣に上ったときにも、屋根の頂に流れ星のような淡い光が立っていたという。古戦場で死んだ多くの将兵の迷う魂を思わせる出来事で、大阪市はその後、戦没者の大施餓鬼を催し、豊国神社を大手前へ移す準備を進めたという。
原典より
その日午前十時ごろのこと、天主閣の頂上を飾っている鯱鉾の尾のあたりから、まっ黒な煙がモウモウと立ち上りはじめたのであった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。