座敷に降り積もった百数十枚の飛び銭
どんな伝承か
飛び銭の話は各地で聞かれる。仙台市の繁華街のひとつ東一番丁は、むかしその南部を塩倉丁といった。ここに大町刑部頼利の屋敷があった。刑部が昼寝をしていると、ぱちん、ぱちん、と音がする。起きて見ると塀の向こうから小石を投げ込む者がいる。童子のいたずらかと表に出ても誰もいない。またの非番の日、家にいると、しゅ、しゅ、と音がして座敷に銅銭が投げ込まれた。投げ銭は止まず、あわせて百数十枚になった。登城して物識りの侍に語ると、これは飛び銭といって昔からよく聞く話だ、と答えたという。のちに仙台藩主五代伊達吉村がこの話を聞き、飛び銭を見たいというので献上したが、普通の銅銭と変わらなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。