仏壇の前で数珠をくる盛岡の市子
どんな伝承か
日本にも死者と交通する霊媒は古くからあり、ことに関東から奥羽にかけて流行した口寄せや神子は、こうした交通を職業にしていた点で有名である。家に死亡事件があった時や初七日などにその家へ招かれ、弓を前に飾って弦をたたきながら、死者の生前の行状から今の地獄極楽の有様までを述べたてた。ところが著者が自ら調べたところ、当時なお盛岡市に盛んに行なわれていた口寄せ、または市子たちは、失神状態には入らず、仏壇の前で弓の代わりに数珠をくり、哀調を帯びた亡者の語の決まり文句を、覚醒したまま一種の調子で歌い出すにすぎなかった。それでも死者の親族の婦人たちは盛んに涙を流した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊学講義(変態心理学講義録)(小熊虎之助(述)・日本変態心理学会・心霊学・変態心理学)
『心霊学講義(変態心理学講義録)』は、文学士小熊虎之助が述べ、日本変態心理学会が講義録として出した心霊学の講義である。精神感応、交霊、透視と未来の予知、心霊物理現象、騒ぐ幽霊などを、英国の心霊研究の調査例や講者が盛岡で確かめた事例を引きながら、詐術や錯誤を見分ける心理学の立場から論じる。全十章で、こっくりさんなどの自働現象の説明に始まり、終章で長尾夫人や三田光一の念写実験を検討し、巻末に内外の参考書解説を付す。