元旦の書斎で本を読んでいた青年
どんな伝承か
昭和九年の一月二日、作家の福田清人が杉並区和田本町の国文学者塩田良平の家へ年始に出向くと、夫人は怪訝な顔で、昨日もおいでになりませんでしたかと尋ねた。元旦の朝、夫人は書斎で紋付き姿の青年が机に向かって本を読む後ろ姿を見かけ、髪をオールバックに伸ばした福田だと思い込んで茶を置き、声もかけていたのである。青年は振り向きもしなかった。のちに塩田が示した写真の主は、明治の文豪山田美妙の子、旭彦だった。病弱の旭彦は元旦の正午に世を去っており、父の遺した書物を預かる塩田の書斎へ、最期にもう一度それを見に来たのだろうと語られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編者)・昭和中期~後期(推定1970年代~1980年代))
私は幽霊を見た=怖い怪異体験(東雅夫編)/人魂・鬼火・狐火/機関車・電車の怪/各地の幽霊目撃談/不気味な怪音と怪異