母が持っていった足の痛み
どんな伝承か
昭和三十四年、東京都世田谷区桜新町での話。語り手は事情があって母が三度替わり、三人目の母は十七歳の時に来た。その母が乳癌で五十日間入院し、三年間闘病するあいだ、精神的にも経済的にもできる限りのことをした。ある日母は「何一つ貴女に親らしいことをしてあげられなかった」と嘆き、「私が死ぬときせめて足の痛みを持っていってあげたい」と言った。当時語り手は左足を捻挫し、半年通院しても痛みが取れずにいた。一か月ほどして母は亡くなり、火葬場で手を合わせていると、突然その足の痛みが消えていることに気づいた。以来二十三年、痛みを覚えたことはないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。