関所破りで捕えられた若僧純心とお馬の情話
どんな伝承か
嘉永の末ごろのこと。五台山竹林寺の別房妙高院に純心という若い僧がいて、寺の近くに住む漁師の娘お馬と深い仲になった。純心は夜に頬かむりをして、高知の目抜きの播磨屋橋へ出かけ、店で簪を買ってお馬に与えた。坊さんが簪を買ったという噂がぱっと広まり、寺にいられなくなった純心はお馬を連れて夜逃げしたが、関所を破ったため捕らえられて高知へ連れ戻された。二人は三日間晒されたうえ、お馬は高知から西へ十里の須崎へ、純心は伊予の方へ追い払われた。高知のあたりでは名高い情話だったという。
原典より
そんな がばっと がって たので若い僧侶は寺にもるたたまられなくなり、 夜女を伴れて のだへ逃げたが、關所を破ったために捕へられて高知に伴れ戻され、…—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。