久武内蔵助の子を襲う怨霊
どんな伝承か
八人が死んだのち、親実の小高坂の邸や木塚村の墓所には怪しい火が燃え、弾丸のような火の玉が飛んで、当たった者は即死したり病んだりした。その頃、久武内蔵助の邸では末の男の子が庭で遊んでいると、松の傍から五十余りの白髪の老女が現れ、若様と呼んで肩に手を掛けた。子は大声で泣き、そのまま仰向けに倒れて病みついた。僧を招いて祈禱させると、子は起きあがって「悪人を生け置いてたまるか」と叫びながら座敷を走り回り、明け方に倒れて死んだ。七日目の晩には十二三の総領が腹に短刀を突き立て、検使が来て詰腹を切らされたと言い残して息絶えた。妻もその夜のうちに自殺し、八人あった子は皆その後で変死して、末子ひとりが内蔵助と日向へ逃れた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。