「黒いものが出た」で止まった実験
どんな伝承か
公開実験の二日目、研究会は霊能者を囲む黒幕のキャビネットの周辺に石灰を撒くなどの装備を申し出たが、すべて許可されなかった。実験は前日と同じく祭壇の菓子が参加者に配られる場面に入ったが、参加者の一人が「黒いものが出て来た。また出て来た」と声をあげた途端、現象はぷつりと断たれ、何の反応も示さなくなった。やむなくキャビネットを開いて中をうかがうと、霊媒は気絶しているようであった。参加者中の医者に診察を求めたが回復は速やかでなく、深夜に至って実験は中止され閉会となった。声をあげたのは筆者の助手で、戦場で暗夜に敵兵を見る訓練を受けていたため、暗がりの中の動きを発見したのではないかという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊と神秘世界(福来友吉・1932年(昭和7年))
『心霊と神秘世界』は、文学博士福来友吉が著し、昭和七年に人文書院から発行された心霊研究と仏教思想の書である。御船千鶴子・長尾夫人・三田光一らの透視と念写をはじめ、霊の幻化、念動、物質化など国内外の心霊現象を実験記録とともに論じ、後半では自我・神秘世界・霊と生命を真言密教や華厳の教えによって説く。全五編からなり、この本文は昭和五十七年に心交社が出した復刻版で、梅原正紀・井村宏次らの「解説研究編」を付している。