青い三角頭の人々と血の流れる土穴
どんな伝承か
掛川市の溝口平二郎さんは戦時中、満洲で憲兵として従軍し、戦後はシベリアに抑留され、伐採中に倒れてきた木で胸と腹に深い傷を負った。帰国から八年の療養を経て、肋骨の切除や右肺の摘出を含む十時間の手術を受けた。麻酔が切れて激痛に襲われたのち急に痛みが引くと、閉じた目に、病室の人々が真っ青な肌で頭の三角にとがった姿となって黙々と動くのが見えた。続いて血の流れ落ちる土の穴をエレベーターのように沈み、解き放たれた心地よさを味わった。薄明るい通路で青い三角頭の人々にふさがれ、脇道へそれて明るい所に出ると、呼ぶ声で目が開き、妻子と医師が泣いて喜んでいた。丸二日、意識がなかったという。
原典より
その次の瞬間、壁面に黒々とした血液が垂れ流れる大きな土穴の中へ沈んでいきました。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。